【article】
大正時代の横浜に実在した「メリケンお浜」と呼ばれた女性をモチーフに、2015年より『ウキヨホテル』シリーズを描いている劇作家・河田唱子。2017年、劇作だけではないウキヨホテルのあり方を模索し、横浜に縁の深い写真家・加藤甫と共に、(リサーチを兼ねた)写真作品の制作を実験的に始める。以後、大正時代の横浜を代表する名所などで撮影を重ねる。
2019年トライアウト公演『ウキヨホテル』を行うと同時、舞台公演に限らないナラティブな表現活動を行うプラットフォームとして、アートプロジェクト「Ukiyo Hotel Projyect」を立ち上げる。第一弾として、2017年より行ってきた実験的な写真撮影を発展させ、”100人の女優が100通りのメリケンお浜を即興で演じ、100パターンのメリケンお浜を写真の中に立ち上げる”ことをコンセプトとした【100人のハマコ】シリーズを開始する。Ukiyo Hotel Projectの公式Twitter上で呼びかけを行うと、100名募集したところ、反響が大きく1週間で150名以上の女優やダンサー、歌手、コスプレイヤーなど多様な職種の方々からの応募を得る。
以後「”河田の描くハマコ”ではなく、自分自身にハマコをインストールして、”オリジナルのハマコ”をカメラの前で体現してもらう」という趣旨の元、スケジュール調整や会場探しに苦労しながら、断続的に撮影を行っている
2019年には松戸市にある「パラダイスエア」という施設に協力を仰ぎ、撮影。
女優と加藤が一対一で撮影となった。
「パラダイスエア」という施設は、元々ホテルだった建物を改装。
国内外の様々なアーティストたちが、ショートステイして作品作りに、ロングステイで長期的なアート制作を行うなど、様々な用途で使われる、松戸市や文化庁の助成も受けている、芸術活動の拠点。
元々がホテルだっただけに、「ハマコ」を表現してもらうには、適切な舞台と言えた。
そして、大きなベッドルームで、加藤がシャッター音のしないカメラを用いて撮影。
カメラ・シャッターを意識しないで自由な表情を女優に見せてもらい、「ハマコ」という役柄を、違う女性の顔・体がそれぞれ表現していく、その面白さが出る撮影となった。
2020年、コロナ禍によりプロジェクトは中断。
しかし、2021年、新たに【100人のハマコ】は再起動。
コロナ対策を十全に図った上で、撮影を再開。
100人100通りの、様々な「ハマコ」を写し取っていく。